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シクロクロスが好きなGIROの日記


by giro1965
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オペラの運命

出張中は体調も悪く本をたくさん読んだ。その内の一冊。

オペラの運命―十九世紀を魅了した「一夜の夢」 (中公新書)

岡田 暁生 / 中央公論新社



この本は、オペラの歴史、王侯貴族の儀式として生まれたこと。当時は貴族の出会いの場だったこと。そんな歴史から始まります。パリオペラ(Garnier)座のボックス席は、後ろに食事ができる空間があったりしましたね。今はここはバレエ中心かな、オペラはほとんど見れないでしょうけど。

また、オペラ中に寝たりすることは当たり前だったようです。今でも私もオペラを見ながら王侯貴族のように眠るのが好きですが、数年前に見たオペラで、歴史的名演といわれるものでも私が寝たことを今でも妻にチクチクと弄られることがある。まあ、王侯貴族のように寝たということで、この本を読んで安心した。オペラは寝てもいいんだ。

モーツアルトがそこに人間の息吹を吹き込んだこと。その後もブルジョアや裕福な人向けの芸術だったこと。たしかにオペラとして見ておもしろいのはモーツアルトの喜劇オペラからだと思います。モーツアルトの悲劇オペラは、ピンときません(皇帝ティトス、イドメネオ)。

そもそもモーツアルトオペラとの最初の出会いは小学生の頃。子供のころ母につれられてミュンヘンにいくと、夜は母は劇場やコンサートに行くときに、子供は家においても暴れてしかたがないと判断したのか、叔母は私と弟をマリオネット(人形劇)に連れて行ったのでした。
そしてそこで上演されていたのは、子供向けの「魔笛」の人形劇版です。今でもミュンヘンやザルツブルグのマリオネット劇場ではこのレパートリーがあるはずです。それ以外にもカルルオルフのDie Kluge(賢い女)なんかも見た気がするが、いつごろだったか、何歳だったかということは覚えていない。

当時はちょっとはドイツ語も理解していたが、わからない事もたくさんあって、叔母にWas? Warum?と聞きまくっていたに違いない。人形劇は子供向けとしても、大人向けとしても良くできています。ここで覚えた魔笛のアリアは、一生忘れないでしょうね。今でも時々口ずさむし、ヒルクライムしていても、頭に響くことがあるな。

また、ワーグナーは、ラインの黄金の初演の際に王侯貴族を平土間に並べた椅子にすわらせた・・・・これまでは王侯貴族はボックス席というのが相場だったのに・・・ということをやってのけた人だったということも。ワーグナーのオペラ、特に指輪は耐えることに意義があるということが書いてあります。私もこの指輪を3回通して見て、耐えました。ワーグナーの「指輪」は耐えることに意義があります。本当です。

それで、オペラのどこがいいの?って聞かれれば、その「雰囲気」というのが一番しっくりする回答だなあ。そういう意味で、ミュンヘンのオペラ座が、1980年代は一番オペラっぽかった。だからCDだけで聞くこともありますが、DVDで見ることもありますが、劇場に行くのが今でも楽しみです。

雰囲気には、以下の要素があると思います。
1.タキシード+ドレスで着飾る観客、すなわち舞台だけではなく観客も「他とは一線を画している」というスノビズム
2.金がかかった特別な演出、ミュンヘンの当時のワーグナーの演出も面白かった。レンホーフ演出、サバリッシュの指揮で、ルネ・コロの声にやられた、音楽で圧倒されるのはもちろん、映像でも圧倒されていた。あとは、シュトラウスの薔薇の騎士などもすばらしかった。最近はミュンヘンもシンプルになってきたらしい。最近はいっていませんけどね。シーズンが合わない。
3.出会い、オペラというのは出会いの場です。現代でも変わりません。今でも私の人生に深くかかわっています。ひとつひとつの出会いで、一晩話ができるぐらいです。

もはやほぼ、博物館的な展示場、歴史的な遺物になりつつオペラですが、これからもスノッブ達を駆り立て、出会いの場を提供してくれることを期待します。
by giro1965 | 2011-05-24 10:50 | 音楽